国家試験の正答率の統計から、経穴が苦手な学生が多いという実態が浮き彫りになっている。特に、「要穴」の理解不足か、「場所」の特定ができないことか、という疑問について、提供されたデータをもとに分析を行った。
結論から述べると、「要穴(Yōketsu – key points)」に関する知識と、「場所(Basho – location)、特に解剖学的指標を用いた正確な取穴法(Shuketsuhō – locating methods)」の両方に課題があり、複合的な苦手意識が形成されている可能性が高い。以下に、各要素の分析を行う。
目次
1. 要穴(要穴の種類、機能、所属など)に関する苦手さ
要穴とは
原穴、郄穴、絡穴、募穴、兪穴、五兪穴、四総穴、八会穴、八脈交会穴、下合穴など、臨床上重要な経穴を総称して「要穴」と呼ぶ。
苦手となる主な理由
- 要穴の種類と機能理解の複雑さ
- 問題#A23105:募穴が側腹部にある臓腑はどれか → 正答率29.8%
- 問題#B30108:八会穴で募穴でもある経穴の所属経脈 → 正答率45.9%
- 問題#A25102:肺の五要穴のうち、表裏を同時に治療する経穴 → 正答率49%
- 問題#A28107:腎の募穴の所属経脈 → 正答率49%
- 奇経八脈と要穴の関係の理解不足
- 問題#B23109:陰蹻脈の郄穴 → 正答率51%
- 問題#B29110:八脈交会穴と奇経の関係 → 正答率49%
- 要穴の臨床応用の理解不足
- 問題#B30121:咳嗽と発熱に使う五兪穴 → 正答率59.2%
- 問題#B27110:急性症状に適した五要穴 → 正答率63.3%
これらから、単なる記憶ではなく、分類・機能・臓腑所属・臨床応用の統合的理解が必要である。
2. 場所(部位、取穴法、解剖学的関係)に関する苦手さ
正確な取穴法の難しさ
- 解剖学的指標との照合困難
- 問題#B27109:筋腱と経穴の位置関係 → 正答率37.5%
- 問題#B30118:顴髎の取穴法 → 正答率63%
- 問題#B28109:耳周囲の取穴法 → 正答率59.8%
骨度法・距離測定の困難
- 問題#B22110 / B25103 / B26104:骨度に関する問題 → 正答率43.3%前後
- 問題#B23103:肩外転時の相対距離 → 正答率46.6%
- 問題#A28108:手関節横紋から経穴までの距離 → 正答率67.9%
経脈走行と解剖との関係理解の不足
- 問題#A29095:腹部の経脈と表裏関係 → 正答率37.8%
- 問題#B21106:大腿の前内側を通る経脈 → 正答率48.6%
- 問題#B22108:複数筋を流注する経脈 → 正答率69.9%
経穴と神経・筋・血管との関係の理解不足
- 問題#B29121:顔面神経支配筋にある経穴 → 正答率51.7%
- 問題#B24105:伏在神経支配領域の経穴 → 正答率53.5%
- 問題#A30099:筋の起始停止にある経穴 → 正答率61.5%
場所の理解には、解剖学的構造との統合的知識が求められ、これが苦手意識の要因となっている。
まとめ
経穴の苦手意識は、以下の2点に起因する:
- 要穴に関する複雑な分類・作用・臓腑経脈との関係性の理解不足
- 場所に関する解剖学的構造と取穴法の理解・応用力の不足
特に正答率の低い問題に共通するのは、単純暗記では対応できない概念的理解と実技的スキルの統合が必要な点である。
苦手克服のためには、以下のアプローチが有効と考えられる:
- 要穴の体系的な整理(共通点・例外の把握)
- 経穴位置のランドマークとの紐づけ学習
- 経脈の走行と解剖学的構造のマッピング練習
- 実技としての取穴演習を通じた立体的な身体理解
このような学習戦略が、国家試験対策における経穴分野の理解向上と、現場での実践的な活用力の養成につながるであろう。
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